耳の症状

目次

痛い

急性中耳炎(きゅうせい・ちゅうじえん)

はじめに

風邪を引いた後から「耳が痛い」「熱が出る」「耳だれが出る」などの症状が出ます。小さなお子さんだと「機嫌が悪い」「耳をよく触る」「発熱がある」ことで気づかれることがあります。

耳の写真
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風邪をひいた後から右耳の痛みがあり受診されました。右耳の鼓膜から外耳道にかけて発赤があります。また鼓膜の下半分に膿貯留が確認できます。左耳は正常です。

治療

抗菌薬の内服を行い、細菌感染を減少させます。また内服をしても症状が改善しない場合には、鼓膜を切って中耳炎を治すこともあります。

外耳道炎 (がいじどうえん)

はじめに

耳掃除をした後や耳に水が入った後から、「耳の痛み」を感じ炎症がひどいと「耳から汁が出てくる」ことがあります。

耳の写真
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毎日お風呂上がりに耳掃除をしていて、耳が痛くなり受診されました。両耳の外耳道が発赤しています。鼓膜は異常ありません。。

治療

軟膏や点耳薬を使用します。炎症がひどいときには、定期的に通院し耳の消毒が必要になります。耳の触りすぎが原因でなることがある為、炎症が落ち着くまでは触るのを止めましょう。

かゆい/ゴソゴソする/つまった感じがする

耳垢塞栓 (じこうそくせん)

はじめに

「耳が痒くなる」「耳の中でゴソゴソする」「聞こえが悪くなってきた」などの症状になります。通常は1週間に1回程度の耳掃除でよいのですが、たまりやすい方や取りづらい方は、耳鼻咽喉科で耳垢を取ってもらうと良いです。

耳垢の写真
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【ケース1】
健康診断で耳垢を指摘され受診されました。耳垢のため鼓膜が見えませんが、難聴や耳がつまった感じはありませんでした。

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【ケース2】
左耳の聞こえが悪いため受診されました。左耳には耳垢が充満しており、耳垢をとると聞こえは元に戻りました。右耳は少量の耳垢があるのみでした。

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【ケース3】
右耳に湿性耳垢が充満しています。左耳はきれいです。

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【ケース4】
右耳でゴソゴソ音がするため受診されました。両耳とも鼓膜の表面に耳垢を認め、違和感の原因となっています。耳垢除去にてゴソゴソは無くなりました。

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【ケース5】
右耳でゴソゴソ音がするため受診されました。両耳とも鼓膜の表面に耳垢を認め、違和感の原因となっています。耳垢除去にてゴソゴソは無くなりました。

治療

当院では耳用の顕微鏡を使用し、痛みが無いように耳垢を除去しています。乾燥した耳垢だと3-6か月おき、湿った耳垢だと1-2か月おきに来ていただくことが多いです。

聞こえが悪い

加齢性難聴 (かれいせい・なんちょう)

はじめに

年齢とともに徐々に聞こえは悪くなります。聞きかえしが多くなったり、テレビの音を大きくしたりして、家族から難聴を指摘されることがあります。

聴力検査
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40歳代から高い音の難聴が進行するようになり、体温計の「ピピ、ピピ」が聴こえづらくなってきます。75歳以上では約半数が難聴のため会話が聞きとりづらくなり、テレビの音量が大きくなります。

治療

残念ですが、加齢性難聴を治すことはできません。日常生活で聞こえが悪く困るようでしたら、補聴器が必要になります。まずは耳鼻咽喉科で聴力検査を行い、補聴器店へ紹介となります。補聴器に関する案内は下のボタンをクリックしてください。

補聴器の使用を考えている方に購入方法などを案内しています。

突発性難聴 (とっぱつせい・なんちょう)

はじめに

ある日突然、または数日のあいだに「片方の耳が聴こえにくく」なります。
「耳鳴り」や「耳がつまった感じ」、「ふらつき」を感じることもあります。

聴力検査
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前日から急に左耳が聞こえづらくなり、耳鳴り(キーン)がするため受診されました。聴力検査で左耳の2000Hzから8000Hzの聴力が低下しています。

治療

難聴が軽度から中等度の場合は内服を行いますが、難聴が高度のときは入院して点滴を行います。
突発性難聴は早く治療を開始することが大切です。難聴になってから3日以内に治療を開始すると治る可能性は高くなりますが、2週間以上経過してしまうと聴力改善は難しくなります。
突発性難聴は適切な治療を行っても、1/3の人は聴力が元に戻る「完全治癒」、1/3の人は聴力が変わらない「聴力不変」、1/3の人は完全には良くならない「不完全治癒」となっています。

低音障害型感音難聴 (ていおんしょうがいがた・かんおんなんちょう)

はじめに

「急に耳がつまった感じ」、「低い音が聴こえにくい」、「耳鳴がする」、「軽いめまい」がすることが特徴です。突発性難聴やメニエール病と似ていますが、聴力検査で低音域に限定された感音難聴である、めまいが軽度である、同じ症状を繰り返していない、などで判断します。

聴力検査
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3日前から右耳がつまりボーとするため、受診されました。聴力検査で右耳の125Hzから500Hzの聴力低下を認めます。

日常生活の注意

低音障害型感音難聴は、睡眠不足や過労などのストレスを背景として発症することが多いため、十分な睡眠、疲労回復、ストレス解消などが必要です。
また、台風や低気圧が近づくと症状が悪化することがあります。天気予報と体調の変化を観察し、調子が悪いようなら無理をせず休むようにしましょう。

治療

副腎皮質ステロイドや浸透圧利尿剤(イソバイド、メニレットゼリー)などを内服します。また、漢方薬(五苓散、柴苓湯)を使用することもあります。

予後
  1. 短期的には予後良好例が多い。
  2. 長期的には反復や再発することが多い。
  3. 長期間経過しても回復する例がみられる。
  4. 自然回復も多い。
  5. 3割の方が、メニエール病へ移行する。

滲出性中耳炎(しんしゅつせい・ちゅうじえん)

はじめに

風邪を引いた後から耳の奥に浸出液が溜まり、「耳がふさがった感じ」や「聞こえが悪い感じ」がします。子供さんの場合は、「耳を触わることが増えた」、「テレビの音が大きくなった」、「言葉の発育が遅い」などで気づくことがあります。

耳の写真
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風邪をひいた後後に、耳がつまって聞こえが悪くなったため受診されました。両耳の鼓膜の色が悪く、滲出性中耳炎を認めます。

治療

急性鼻炎や副鼻腔炎が原因となることが多いため、まずは内服で鼻炎の治療を行います。鼻すすりをすると中耳炎が治りづらくなるため、片方ずつ優しく鼻をかむようにしましょう。

慢性中耳炎(まんせい・ちゅうじえん)

はじめに

鼓膜にできた穿孔がふさがらず、聞こえが悪くなり耳漏を繰り返します。
小さな鼓膜穿孔だと自然に閉鎖することがありますが、耳漏を繰り返すと穿孔は徐々に大きくなり自然に閉じることはなくなります。
慢性中耳炎を放置すると、炎症が内耳(聞こえを感じる神経)に影響を及ぼし、難聴が治らなくなってしまいます。

耳の写真
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子供の頃から中耳炎を繰り返していましたが、放置していました。最近になり耳漏が止まらなくなり受診されました。左の鼓膜に穿孔があり、周囲に耳漏や耳垢が付着しています。

治療

炎症を起こし耳漏が出ているときは、抗菌薬の点耳や内服を使用します。
鼓膜の穿孔を閉鎖するには、処置や手術が必要になります。慢性中耳炎の程度に応じて、方法が異なります。

保存的鼓膜穿孔閉鎖術(パッチ術)

鼓膜穿孔が2-3mmと小さく、耳漏や炎症が無い場合に行います。外来で簡単にでき、ほとんど痛みもありませんが、穿孔閉鎖率は6−7%と低いです。

リティンパによる鼓膜穿孔閉鎖術

2019年12月に認可された新しい鼓膜形成用素材です。初回手術であること、耳漏が無いこと、鼓膜穿孔が鼓膜輪にかかっておらず全周性に見ることができる、などが条件です。
外来で行う事ができ、20分くらいで終了します。1回での穿孔閉鎖率は3-5割とやや低いため、複数回での処置が必要になることがあります。4回行った場合の穿孔閉鎖率は、7-8割となります。

鼓膜形成術

鼓膜穿孔の大きさが鼓膜全体の1/2以下で、耳漏が無く、側頭骨CTで耳の中に炎症を認めない症例に行います。局所麻酔で行い、手術時間は約30分です。1回での穿孔閉鎖率は8割程度ですが、最終的には約9割で鼓膜穿孔は閉鎖します。

鼓室形成術

大穿孔である、鼓膜穿孔縁を見ることができない、中耳に病変がある、耳小骨の操作が必要になる、真珠腫性中耳炎の可能性がある、など上記の手術では対応できないような中耳炎で行います。全身麻酔で行い、手術時間は1時間から3時間かかります。入院期間は3-5日間必要ですが、穿孔閉鎖率は98-99%と非常に高いです。

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